絵本

世界中のどんな民族でも言葉は、
「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」
の順で身につきます。


絵本は言葉の宝庫です。


乳幼児期に美しい日本語がたくさんつまった質の高い絵本を読んでもらうことで、耳(聞く力)が育ちます。
質の高い絵本は「大人が子どもに読んであげるもの」として作られています。
大人が心をこめて読むことで、豊かな言葉が子どもの耳に心地よく届きます。
同時に、子どもの心に愛情がしみこみます。
絵本は言葉を豊かにするだけでなく、愛着を深める最適な道具でもあります。

親子の絆を深め、言葉を豊かにし、想像力をはぐくみ、知恵や勇気を与えてくれる。
絵本で得られるものは、まさに生きる力そのものです。

こどものとも東北では、世界中で評価の高い絵本だけをお勧めしています

『よい絵本』とは

「子どもに与えるものはほんもの・よいものでなければ…」とだれもが考えます。

では、ほんもの・よいものとは何でしょうか?

特別に定義が決まっているわけではありません。与える側(大人)の価値観を基にした判断に委ねられるものです。

子どもの口に入る食べ物の場合は、栄養価の高さとバランスを考えます。
保存料や着色料などの添加物が使われていないかを気にします。丈夫な身体をはぐくむために食べ物を吟味します。

同じように、子どもの健全な成長にとって耳や目から入るものもとても大事です。

「絵本は大人が子どもに読んであげるもの」です。
絵本に書かれている文章が、読み手の言葉として子どもの耳に入ります。
子どもは聞くことによって言葉を獲得していきます。

どんな言葉を子どもの耳に届けるべきか。
美しい日本語で書かれている絵本かどうかが選ぶポイントです。

幼い子どもは字が読めないので大人が代わりに読んであげる、ということではありません。
読んでもらうことで、子どもは言葉を聞きながら絵をじっくりと見ます。見るというよりも絵を読むと言った方がいいかもしれません。

人生経験の少ない子どもは絵をイメージの手がかりにしています。想像力を助ける絵は、子どもが初めて出会う芸術作品です。

部屋に飾る絵画のような質の高い絵で描かれている絵本を選びたいものです。


「頭の中で言葉を絵に変換する」想像力とは、言葉の情報を頭の中で絵に変換する作業のことです。

例えば、「お年寄り」という言葉を聞くと頭の中におじいさんかおばあさんが浮かびます。

そのお年寄りが「お酒を飲んでいる」という言葉の情報が加わると、多くの人が“おじいさん”を想像します。お酒という言葉が男性を強く連想させるからだと思います。

ところが、いつもお酒を飲んで酔っ払っている“おばあさん”がお隣に住んでいる人にとっては、「お酒を飲んでいるお年寄り」と言われたならば“おばあさん”を想像するでしょう。

大人も子どもも、耳や目から入ってくる言葉の情報に自分の持つ体験を重ね合わせてイメージしています。

実体験の浅い乳幼児期に、たくさんの絵本から美しい日本語とさまざまなよい絵に出会うことは、きめの細かい想像力を身につけるためにとても大切です。


「想像力は生きる力」です。

すべての大人は、“おもいやり”のある子に育ってほしいと願っています。人の気持ちを察して気遣うことは想像力以外の何物でもありません。

「道に飛び出すと危ない!」と危険を予測することも想像力です。

想像力はまさに生きる力そのものです。

想像力は言葉の体験と実体験なくしてははぐくまれません。

美しい言葉と質の高い絵で作られた絵本を楽しむことは、豊かな想像力を身につけるために最良の方法です。


絵本の最も大きな役割は、「絆を深める道具である」ということです。

子どもにとって絵本を読んでもらうことは、愛情をたっぷりと受ける至福の体験に他なりません。

心を込めたやさしい語り口は、子どもの情緒を安定させ、絆はいっそう強く結ばれます。そして、しっかりとした基本的信頼関係や自己肯定感が育ちます。

大好きな大人が寄り添ってくれる。ページをめくるたびに何かがでてきて楽しい。その楽しさやおもしろさを大人と子どもが共有する。

「愛着を深める道具」として絵本を読んでいると、子どもは必然的に絵本好きになります。

絵本好きな子どもは、長じてからも本好きです。


よい絵本は親子三世代にまたがる。親から自分が読んでもらった絵本を、親になってわが子に読む。親→自分→子の三世代で楽しむことになります。年月で言えば約30年。

出版されて30年以上を経たロングセラーの絵本、例えば「ぐりとぐら」や「てぶくろ」、「はらぺこあおむし」などはハイスタンダードです。

「ぐりとぐら」を出版している福音館書店は老舗の中の老舗です。

子どもにとって絵本とは何かを60数年間追及し続けている信頼のおける出版社です。絵本選びに悩んだら“福音館”の絵本を手にしてみれば、まず間違いはありません。


絵本は子どもの心の栄養です。

言葉は、美しい日本語表現や言葉の響きのおもしろさのあるもの。

絵は、質の高い美術的な要素や、絵を見ただけでお話しの内容がわかる(絵が物語っていること)もの。原作や原型(昔話)に忠実なもの。

子どものすこやかな成長にとって栄養価の高い絵本かどうかを、大人の責任において真剣に選ぶということが大切です。

月刊絵本

1956年、福音館書店は《こどものとも》を世に送り出しました。

毎号一つの物語に一人の画家が全場面をとおして絵をつける、ペーパーバック版の月刊物語絵本です。

私たちは、何よりも絵本は
「子どもに読ませる本ではなく、大人が読んであげる本」
だと考えました。

「大人がくりかえし読んであげることで、はじめて子どもたちは絵本の世界をたっぷりと楽しむことができ、心を豊かに育てることができる」と考えたからです。

そのために一番ふさわしい絵本、それは名作物語のダイジェスト絵本ではなく、断片的な保育教材を寄せ集めた絵雑誌でもなく、一流の著者・画家が子どもたちのために全力を注いでつくる「大人も子どももいっしょに感動できるすぐれた絵本」です。

この考え方は、ずっと一貫した私たちの基本姿勢となっています。
今も変わらぬ思いで各月刊誌をお届け致します。どうぞご期待ください。